製品開発のうらばなし <ファイバートランク>
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8月17日のブログでも紹介しましたファイバートランクについて、もう少し掘り下げて書きたいと思います。
素材の正式名称は「ヴァルカナイズド・ファイバー」。
愛称的に「ファイバー」として素材から製品までも含めて呼称することが一般的になっています。
その頑丈さから軍需用途でも使われたのですが、なんと鞄としてだけでなく鉄製ドラム缶の代替としてガソリンなど燃料の運搬にも使われていたこともあり、200リットルのガソリンを入れたファイバー製ドラム缶を2メートルの高さから落としても壊れず、中身が漏れることは無かったそうです。
豊岡で材料として使われるようになったのは、1923(大正12)年に当社創業家の遠藤嘉吉郎が柳行李の縁部分にファイバーをU字に曲げて鋲で留める「ファイバー縁柳行李」を創案・実用新案登録し、柳行李の生産効率と使いやすさを一気に向上させたところから始まりました。
その後、豊岡の実力者たちが一致協力・切磋琢磨しファイバー鞄の開発・商品化を1928(昭和3)年に成功させ、1936(昭和11)年にはベルリン五輪に参加する日本選手団に正式採用され、この頃から1954(昭和29)年ごろまでファイバー鞄が豊岡の鞄産業の主流となっていました。
ただ。。。
一時は売れすぎて困るほどの地場産業に成長したのですが、やがて、不安定な世界情勢による不況などから資金難や材料不足といった打撃を受ける中、塩化ビニールレザーなどケミカル系素材へのシフトなど進化・革新を続けることでピンチを切り抜けました。
ちなみに。。。
この頃に豊岡が生産を請け負った鞄「スマートケース」(スマホケースではありません)が、社会現象となった映画「君の名は」(昭和の名作です。平成のアニメ映画「君の名は。」ではありません)で、ヒロイン氏家真知子に愛用され「真知子巻き」とともに大流行しました。
さて、話をファイバーに戻します。
時代とともに世の中の価値観や嗜好が変化・多様化し、いろんな「古き良き」が見直されることも一時のレトロブームから、今では当たり前の文化になりました。
それだけに、当社では今の時代性(デザインや使い勝手)をきちんと取り込んだ、進化・革新した「ファイバー」を世に送り出すべく、失われた技術の復活や新しい技術の開発を通してモノづくりを進めています。
今後、百貨店などのフェアを中心に少しづつではありますが、懐かしくて新しい「ファイバー」をご覧に入れたいと思います。
その際には是非、「ファイバー」の背負ってきた物語に思いを馳せていただければと思います。
こちらで、職人たちがファイバートランクを作り上げる様子を動画でご覧いただけます。